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1997-09 文芸部 部誌に寄稿。
タイトルの通り、写真家の男性から読者に宛てた手紙。
北海道に行った時に実際に見かけたキタキツネのしぐさを元にした作品です。
結局、家に着いたのは夜の七時。
両親は笑顔で迎えてくれました。
「なんだか、ここの雰囲気が変わってしまったね」
と、用意された夕食を食べた後に母に話しかけました。
「前よりも道路が太くなった。」
母はそれを聞いて、俯きました。
母はぼそりと観光化のためだ、と言いいました。
私が来なくなって間もなく、それが始まっていたそうです。
少しばかり、私は悲しくなりました。
確かに、前と比べて便利にはなったものの、自然が減ってしまったことに……
翌日、私は幼い頃からの友人に会いに行きました。
彼は、今は旭川で働いているそうなので、父の車を借りて向かいました。
途中の山道で、突然キタキツネが横切りました。
私はあわててブレーキを踏みました。
そのキタキツネは、ひょいと草の中に逃げていきました。
私は車を止めて、そのキツネの行った先を見ました。
すると、さっきのキツネがビニール袋を口にくわえて、山の方に向かっているではありませんか。
夏のこの時期に、食べる物がないなんて……
あのキツネは、人間が捨てたそのビニールの中に、食べ物の香りを見つけたのでしょうか。
私の心は痛みます。
この光景が、いつまでも私の頭から、離れないのです。
彼らの生活を脅かしているのは、我々人間です。
生活を便利にするために、土の上にアスファルトを敷き、山を崩して、彼らの飲み水を絶やしています。
私のような都会の人間が、そのことに気付いても仕様がありません。
これは、ここに住む人たちが、生活を便利にしようとした結果なのです。
やりきれない気持ちが胸に渦巻いたまま、私はこの場所を後にしました。
私は、旭川に着きました。
友人は新聞記者をやっていました。
私たちは、若かった頃のことを話しました。
そして、仕事の話をしました。
私はしばらくはなした後、さっきのキタキツネの話をしました。
俺も知っている、と友人は答えた。
もう少し、あいつら自然の生き物のことも考えないといけない、とも言いました。
そして、私は思ったのです。
他にもこのように考えている人が居るかもしれないと。
その人達に呼びかければ、彼らは救われるかもしれないと。
私はその考えをすぐに友人に話してみました。
友人も良い考えだ、と言い、私に協力してくれることになりました。
それから一年。
私たちは、一冊の本を作りました。
北海道の自然と、動物達の本です。
写真は私が撮り、文は友人が書いてくれました。
あの、ビニール袋をくわえたキツネのことも、もちろん書いてあります。
あれからもう三年経ちますが、今でもこの本は売れ続けています。 売上金はすべて、自然を守るために苗木を買ったりして使っています。
そして、本を読んだ方々の中から、ボランティアとして、私たちの運動に加わって下さる方が多数出てきて下さいました。
私は、この方たちと共に、ずっと、この土地を守るつもりです。
自然の景色や、ボランティアの方たちの働く姿が、今の私の一番の思い出なのです。
私はあのキツネのことを思い出して、今日もまた活動しています。
そこの貴方。
機会がありましたら、是非私たちの本を読んでみて下さい。
きっと貴方にも、ここの素晴らしさがわかると思います。
そして、北海道の自然や動物のことが知りたくなったならば、私の所へいらして下さい。
貴方に気に入っていただけるかわかりませんが、私の写真と温かいお茶と共に、この寒い北の国の話をして差し上げます。
では、またお会いする日まで。
平成九年 九月
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