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 6.th 奇跡~Goddess Desire come in to Ganette~

 人間、そうそう悪いこと(?)は出来ない。
 間の悪いときに、間の悪い人が来てしまった。
 「エル?」
 私は思わず叫んでしまった。
 「どうしてここにいるの?来ちゃいけないって言ったじゃない!」
 「メイ……カ様……」
 すまなそうな目でこっちを向くエル。
 「ちょっと、テティ!あんた、また性懲りもなくそーゆーことするわけ?大体あんた、ちっちゃい頃からそういうことしてばっかじゃない。」
 私はそいつを指さしながら近づいていった。
 「お、お前、記憶が戻ったのか?」
 妙に驚き、私に詰め寄るテティ。
 私はそんな彼をにっこり笑いつつ、どついてみる。
 「久しぶりねえ、テティ。」
 「もう、結構前から顔あわせてたんだけどなあ。」
 ははははは、と二人で血管浮き出させながら笑う。
 私は、ぐいっとテティのローブの胸ぐらひっつかんで引っぱった。
 「私が聖なる心になるからいいのよ!早くあの子を逃がしなさいよ!」
 テティはそれに対抗してか、私のほっぺたを両手でつかんで左右に伸ばした。はっきし言って痛い。
 「仕方ねえだろ、こっちはお前のこと心配だったんだし、それにっ……」
 それに、だとぉ。まだ何かあるのか?
 こ、こいつぅ……
 私の意識がないうちに、また元に戻りやがったなぁ。
 「あの、メイカ様?」
 「今、そんなことをやってて、良いのですか……?」
 さっきからの私たちのやりとりに、あきれて言葉が出なかったのか、やっとの事で私たちに話しかけるエル。その向こうでは、あきれた顔のチハヤが、フィラが立っている。
 はっ!気づかないうちに二人の世界に入ってしまった!ヤな世界だけど。

 「ご、ごめんなさいエル、フィラ……」
 「すみません、チハヤ様、フィリーナ様。」

 お互いの相手に同時に謝る私たち。

 さっきの騒がしかったことが一段落すると、エルがすまなそうに語り始めた。
 「私から頼んで連れてきてもらったのです。テティ様が悪い訳じゃないんです、メイカ様。」
 さっきは気がつかなかったけど、エルの私に対する呼び方が元に戻っている。
 「エル、どうしたの?」
 何かあったのだろうか。
 「メイカ様、テティ様に聞いたのですけれど、私の代わりに消えてしまうって言うのは本当ですか?」
 あ。
 私とチハヤ、フィラはほぼ同時にテティの方を向いた。
 「テティ!」
 「テティウス様!」
 三人の声が重なる。
 「もしかしたらって言ったんだよオレは……悪かったよ、確かに。でも、言っといた方がいいと思ったんだよ。お前の考えそうなことだからな。」
 テティは外を向いてこう答える。
 「メイカ様、私の問いに答えてください!」
 エルが、いつもにない表情で私のことを睨む。
 まるで、私が悪戯したときのガブリエラ母さんのように。
 「……そうよ……」
 私は答えた。
 エルに嘘は、つけない。
 ついたって良いけど、絶対疑ってかかるし。
 「あなたのことだから、そんなことだろうと思いました。」
 うわ、まだ怒ってる。
 でも、私は十六年生きた。でも、エルは数週間しか生きてない。だから、私の命のバトンを、彼女に託したい。だから、これでいいと思う。私は、そのことについては謝る気はない。
 「メイカ様。私は感謝して居るんですよ。私を作られたこと、そして、私を思って逃げてくださったこと、私を親友と呼んでくださったこと。でも、私にその恩を返させないうちに、また恩を上乗せするんですか?」
 「恩なんて思わなくっていいのよ。私が勝手にやっ
てることなんだから。」
 何か、エルと、喧嘩腰になってきてしまった。最後の最後で喧嘩はちょっといやだ。
 「メイカ様、私は、もう十分幸せをいただきました。人になれたし、メイカ様と一緒に泣いたり笑ったり出来たし、お友達まで出来ました。思い残す事なんて無いんです。元々、居なかった人間なんですし。」
 優しい声で、私に言い聞かせるエル。
 彼女も、喧嘩別れはいやだと思ったのか。
 でも、彼女は、自分が犠牲になるつもりで話している。
 「エル、これから先に、もっと楽しいことがあるんだから、こんな所で死んじゃいけない!私はあなたより何十倍も長く生きてるんだから、気にしなくっていいんだからね!」
 私は、こう言った。
 彼女に、そんなこと言ったって意味がないことは重々承知している。
 でも、この子に、未来をあげたいのだ。

 人形。

 ときにそれは、人を楽しませるために、
 ときにそれは、人の役に立つために。

 そんな彼女に、夢を見せてあげたい。

 私は無言で、エルの元へ行き、首に掛けられたペンダントを取ると、広間の中央に設置された祭壇へ行った。そこには、もうすでに石が並んでいた。
 「メイカ様!」
 もう遅い。
 祭壇に描かれた魔法陣が輝きだし、私と石は光に包まれた。

 と。
 エルがこちらに走ってきた。
 そして、私の手からペンダントを取ると、
 私を突き飛ばして、魔法陣の真ん中に座った。

 「メイ、私は、幸せでした。思い残すことは本当にないんです。大好きなあなたと、一緒に過ごした毎日を、私は、どうなっても忘れたりは出来ない。」

 「エル!」
 私は、魔法陣の中へ戻ろうとした。
 でも、テティとチハヤに止められた。
 「もう無理だ!もしお前があの中に入ったとしても、あの子を助けることは出来ない!二人して混沌の中に行きたいか!」
 「放して、放してよぉ!エルぅ!!」
 私は少しでも魔法陣に近づこうと手を伸ばしたが、全然届かない。悔しくて、涙が出てくる。
 そのあまりの光景に立ちすくむフィラ。
 だんだん強くなっていく光。
 消えていくエルの姿。
 そして、

 「ありがとう、メイ。私の大好きな友達……。」

 光の中から最後に、彼女から発せられた声だった。

 「……………………っ」
 私は、もう、声にならない叫びを上げた。
 そして、私の中で、何かが、壊れた。

 光は更に強くなり、辺りも見えないほどだった。
 私は、何も考えられなくなった。
 目を閉じた。

 

 しばらくすると、光が収まり、暖かい気配が前方に広がった。
 風、その方向から緩やかな風が渦巻いてくる。そして、人の形を形成し始めたようだった。

 「私は、南の国の修僧士に作られしデザイア。過去の盟約に基づき、石の後継者の願いを叶えるため、ここに具現せし者。」
 目を開けると、そこには白銀の髪の美人の女神様が私たちの前に降りたところだった。
 「さあ、石の後継者。一つずつ願いを。」
 静かに、恭しく、女神様がこう言うと、しばらく間をおいて、チハヤは言った。
 「母の元へ、私を連れていってくれ。」

 デザイア様に願っても、かなえた願いは消えてしまう。その願いが昇華するだけだから。お母さんは帰ってこない。それだったら、お母さんの元へ行けば幸せになれる。そう思ったのだろうか。

 私は、気がついたら、彼に平手打ちをかましていた。

 テティも、フィラも、そして私自身も、それは信じられない行為だったと思う。でも……
 「あんたは馬鹿?そんなことのために私やあの子が命を懸けさせられていたの……?」
 なんだか、急にいらいらしてきた。
 私自身に向けられていた物が、チハヤにもかかってしまった。
 「そんな願いなんてくだらないじゃない。それだったら、勝手に自殺すればいいじゃない!」
 そう言う物じゃ無いというのは解ってる。
 ただ、チハヤは眠りたいだけ。永遠に、お母さんの思い出の中で。
 「そんな物のために、エルは、私の身代わりで死んだの?」
 彼にとっては重要な、今まで頑張って生きてた理由。
 「そんな物だと!」
 怒るのは無理ない。
 「私は、このためだけに生きてきたんだ、ほかには何も望まない。思い出の中で生きたいんだ。」
 「つまりは死にたいって事なんでしょ。」
 テティは、こちらから目を背けている。
 解っていたが、やっぱり辛いといったところか。
 フィラも、どうしたらいいかわからない顔をしている。心配そうな顔だ。

 「死ぬぐらいだったら生きればいいじゃない。」
 私は、言った。
 エルが私のためにくれた命。
 嘆いて後を追うなんてばからしい。
 精一杯、エルの分まで生きなくちゃいけない。

 ガブリエラは、私の元を離れる時、こう言い残した。
 「……生きると言うことは、生き物にしかない。私が人形だったときには、壊れることはあっても、死という世界はなかったわ。私たちにとって、ここに存在すると言うことは当たり前のことすぎて、とても単調なことだった。当たり前よね、半永久的に動く続けるんですもの。でも、人間は、存在する期間が限られているからこそ、生きるのに精一杯なのよね……」

 おばあちゃんのお葬式。
 私はカノン母さんにこう言われた。
 「おばあちゃんはお母さん以外、子供が全員自分より早く死んでしまって辛かったけれど、精一杯生きたわ。メイカちゃんも、おばあちゃんに負けないように、頑張って生きようね。」
 お父さんのお葬式。
 封印された記憶の中の、辛い思い出。
 ガブリエラ母さんが言った。
 「人は、いつかは死んでしまうものなの。でも、そうした命があるから、辛いことや楽しいことがあるの。お父さんは、自分に出来る精一杯の生き方をした、すごい人なのよ。」

 生きる、と言うこと。
 それは平坦な物じゃない。
 死ぬのは、そこから道が広がらない。ずっとその場に居続けて、辛い思いをしなくていい。でもそれだけ。ただ広がる無の空間に、結局の所、ひとりぼっちで居続けるだけだ。
 「苦しいからこそ、辛いからこそ、すばらしいこと、楽しいことがある。思い出の中に居続けても、幸せになんかなれない。本当の幸せは、自分でつかむ物だから。」
 人形師、と言う職業は、
 仮初めだけれど、命を作る職業だ。
 命の尊さ、それを、私はおばあちゃんに教わった。

 「頑張って生きて、人から愛される人になる。それを今度は目標にして、生きてはいけないの?」

 「………………」

 チハヤは黙ったまま。
 テティは、こちらに近づいてきて、チハヤを見つめていた。

 「最後の約束、忘れちゃった?」
 「最後の約束?」
 チハヤに約束した後、私は彼にこういった。

 『もし、ちーちゃんが寂しいときには、あたし、一緒にいたげるね。』

 「迎えに来たんだよ、寂しいちーちゃんを。」
 私は、膝を落とし、俯いたままのチハヤの手を、そっと握りしめた。

 でも。
 チハヤは顔を上げない。

 「……チハヤ様?」
 不意に声がして、私は振り返った。
 フィラが、あの、呆然としていたフィラが、やっと、我に返ったのか、チハヤに歩み寄ってくる。
 「私は、過去に貴方に、どんなことがあったかを、噂話でしか、知りませんでした。メイカの過去を知る上で、貴方の過去のことを書類で調べたり、テティウス様に語っていただいたり、色々致しましたけれど、けれど、やはり、私はこの件では部外者でした。
 ……それでも、部外者の私でも、これだけはわかります。チハヤ様、貴方は間違いを三つ犯しましたわ。一つは、願いをそのような物に託すこと。二つ目は、貴方の大切な人の、大事な友達を失わせてしまったこと。」
 私は、立ち上がり、そしてフィラを見つめた。
 その瞳には、涙が溜まっていた。それは、溢れて、頬に銀の弧を描く。
 彼女はそれに構わずに、チハヤの傍らにしゃがみこむ。彼の瞳の所在を追って、顔を見上げて。
 「……三つ目は、貴方は、私たちを見ていないことです。こんなに、貴方を愛しているのに、それを信じないでいることです……!」
 彼女は子供をあやす母親のように、彼を抱きしめた。
 その姿は、一枚の絵のようで、私は見とれる。
 「私は、みんなで仲良く生きていくことは、石の力を借りなくても、出来たと思います。だって、みんな本当にいい人で、私も、彼らが好きだから。だから辛いんです。チハヤ様が、それらを手放そうとする、姿が。あまりにも痛々しくて……」
 止めどなく流れる涙を、拭おうとは、しない。
 彼女はなんて大らかな心で、彼を叱れるのだろう。私は励ますぐらいしかできないのに。憧れてしまう。
 私は、まだまだ、子供なのかも知れない。そして、チハヤの心の拠り所は、彼に一番必要なのは、もう、子供の頃の私じゃなく、この少女なんだと、私は確信した。
 ……これでまだ、こーんな風にふてくされてたら、怒るぞ、あたしゃ、本当に!
 
 「あの、お取り込み中悪いんだけど、さっさと願いを言ってくれないかなあ。」
 後から声がする。
 すっかり忘れ去られていたデザイア様。
 あははは……御免なさいね。

 「私は、……もう、いい。」
 フィラのやさしい腕に抱かれながら、チハヤの瞳は虚空を見つめてる。
 少し、考えているようだった。
 テティはそんなチハヤを見つめていたけれど、
 「癒しの涙を継ぎし物、貴方の願いは?」
と、女神様に問われると、少し悩んでいたけれど、
 「……チハヤ様が言わないんなら……」
と願いを言わなかった。
 そして、女神様が、私の方を向いて、訊ねてきた。
 「聖なる心を継ぎし物、貴方の願いは?」
 私は、ラファエルを返して欲しい、と言った。
 だって、こうしてほかの人たち、願いを叶えないんだし、元通りに帰ってくると思う。
 もしかしたら、そう言う希望があった。
 でも、答えは希望していた物とは違った。
 「それは出来ないわ。」
 私の驚いて、そして悲しげな顔を見ながら、彼女は続けた。
 「私には、確かに願いを叶える力はあるけど、これを発動するために混沌へ言った物は戻せないわ。」
 デザイア様を呼んだことで、この術は発動している、
と言うことだ。はあ、じゃあ、あの子はやっぱり帰ってこないんだ……

 突然、何かが落ちる音がした。
 チハヤがフィラの腕の中で気を失っている。
緊張の糸が切れたのか、とっても優しそうな顔で眠っている。
 私は、女神様に言った。
 「あの子をよみがえらせるには、どうすれば良いんですか?」
 一分の希望も、無いのだろうか?

 女神様は少し考えていった。
 「私を作った南の修僧士に頼めば、もしかしたらどうにかなるかも知れないわね。なんて言ったって、作った一族そのものだから。」
 「南の修僧士。」
 私は繰り返していった。
 私たちのほかの、もう一人の師。
 「まあ、確証はないけれど、何かしらのヒントは得られるはずよ。」
 女神様はそう言う。
 確かに、作った本人の末裔ならば、何か知ってるかも知れない。

 私は決めた。
 南の国に行くことに。
 そして、エルを取り戻す。

 「では、また、願いを叶えるときに呼んでね。あなた達にはまだ願いが残っているから。呼ぶのは簡単、石を手に持って念じるだけだから。」
 そんな意気込んでる私を見た女神様はそう言うと、すっと消えていった。

 「………………」

 私とテティ、そしてフィラは、今まで女神様が居た虚空を見つめていた。
 「結局、願いを叶えなかったね。」
 「ああ。」
 

 デザイア様が消えた後。
いきなり、辺りが強い光に包まれた。
私達はその中で、ただ立ちつくすしかなかった。
そして……

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