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7.th 軌跡、そして……~Memory of strange time~

ひとりぼっちになった僕。
僕のせいでみんな居なくなってしまった。
テティも、フィリーナ姫も、
僕には優しかったから
僕のせいで消えてはいやだから、
どこかへ行ってって言ったけど
二人はずっと一緒にいますって言ってた。
二人とも、僕が怖くって、
離れたら何されるかわかんないからって、
一緒にいるのかなって、
悲しくなった。

何日かして、
僕は思いだした。

確かおばあさまが言っていた。
こんな災いしか呼ばない石でも、
一つだけ、すばらしい魔法が使えるって。


おばあさまが言っていた方法は、

ほかの石を使う方法だった。
でも、僕は幸せになりたかったんだ。

そうしたら、
テティが僕に石をくれた。

これが、癒しの涙ですよって。


お母さんの所へ行きたかったんだ。
お母さんと一緒なら、幸せになれると思ったんだ。

だから。
辛かったけれど、ここまでこれた。
何年もかかった。

昔の約束も、忘れた。
だって、今の僕には、
約束なんて守れやしないから。


でも、迎えに行ってしまった。
聖なる心が必要だったから。

すぐに彼女だとわたった。
もう、十六くらいになるメイプルは
とても生き生きしてて、
きらきら輝いていて、
とても綺麗だった。

僕とは正反対で、
ちょっと妬ましく思えた。
ちょっとうらやましく思えた
そして、更に彼女を好きになった。

彼女を家に連れてきたとき、
僕のことをすっかり忘れていた。

悲しかった。
彼女さえも、僕を覚えていてくれないのか。

でも、約束は果たせた。
一緒に食事をして、
散歩をして、
会話して。

でも、
彼女は僕から逃げてしまった。
抱きしめた腕から、逃げ出してしまった。

もしかしたら、
彼女の中に僕の幸せが
あるような気がしたけど、
やっぱり、お母さんの中にしか、
幸せがないのかも知れない。

「一人じゃないよ、ちーちゃん。」

諦めたその時に、
メイプルが手を差し伸べて言った。
フィリーナ姫が、僕を抱きしめて言った。

「周りをご覧よ、一人じゃないよ。
貴方には、貴方を愛してくれる人たちが
いるじゃない。」

その瞬間、
僕の世界が光に包まれた。

そうして、
何も見えなくなった。

 

チハヤ様はずっと一人だった、
オレが居ても、一人だった。

昔からそうだった。
自分一人で全てを抱え込もうとしていた。

でも、メイプルは違った。

あいつが居ると、
チハヤ様は、とたんに表情が豊かになる。

怒ったり、いらいらしたり。

あんまりいい感情じゃないけど、
でも、出さないよりはましだろう?

フィリーナ様だってそうだったし、

何より、オレだってそうだ。

オレだって、あいつが居るとペースが狂うんだ。

本当にあいつは、
聖なる心そのものなのかも知れないな。

あいつに焦がれる人に、
幸せを与える、不思議な宝石。

チハヤ様だけじゃなく、オレも惹かれている。

昔合ったあのときから。

あの、
海のような蒼く澄んだ瞳を見てから。

 

私は、自分では変わったと思う。

王宮で鍛えた社交術も、ダンスも、お作法も、
何にも、意味のない物だとわかったから。

やがては、自分と見合う身分のチハヤ様と、
結婚する物だと思っていた。

でも、彼を好きになって、気がついた。

こんな、心がないチハヤ様と、
結婚して良いのかって。
私は、あの人の心も、欲しくなった。

メイカと知り合って、気がついた。

人生、そんな物じゃないって。
望めば、入ってくる物でもないし、
生きている内に、
大事な物は自然と見つかる物だって。

だから、私は見つけたい。

私が、存在する意味を。
私の大事な何かを。

 

私はメイカ

人形師

おっちょこちょいだけど、めげずに明るい。

私の名前の由来。

母さんが付けてくれた名前。

だけど、

一番の意味は

未来を切り開き、生み出す者

って意味なのかも知れない。

 

 今日は、良い風の引く、晴れだ。
 旅に出るには絶好の日。

 あの後、気がつくと、何もなかったかのように、私たちは広間に立っていた。
 ……ラファエルは……居ない……。
 
 私は、デザイア様の言ったとおり、南の国へ行くことにした。
 だって、こんな別れは悲しすぎる。
 これから先、幸せに生きていきたいから、彼女と。

 カノン母さんに、事情を説明すると、微笑んで、せめて継承式だけでも、と言った。
 私の記憶の封印は、私の誕生日に、継承とともに解けるはずだったらしい。
 私は、継承してから行くことにした。
 それが、おばあちゃんやガブリエラの望みだろうから。

 長かった継承式が終わり、私は早速旅立つ準備をした。旅路は、簡単な物じゃない。かなり遠い。準備は万全にしとかないとね。

 ガネットに、二人を迎えに行ったとき、屋敷でまず出迎えてくれたのは、フィラだった。
 「やっぱり、行くんですね」
 彼女は、少し寂しそうに言う。
 「うん。」
 私は微笑んで、そう返した。
「ラウカ・タッツ。神々の国……」
 ラウカ・タッツ。南の国の正式名称。
 どこにあるか、正確な地図はない。不思議な力を持つ人々が居る国。私たちの先祖の国。
「デザイア様の言っていたとおり、南の修僧士に頼んでみる。」
 「あの子が、そんなに大事なんですね。」
 静かに笑うフィラ。
 「うん、私の親友の一人だもん。」
 「親友、ですか。うらやましいわ。」
 私は、この子が、ホントに可愛く思えた。
 「心配しなくても、フィリーナ様は私の親友ですよ。」
 茶化してこう言うと、フィラは楽しそうに、
 「『フィラ』で良いですよ。」
 と、言った。
 
 彼女は、これから、この屋敷を守って行かねばならない。なぜなら、チハヤの婚約者だし、何より……彼の一番の理解者だから。
 チハヤは、私に責任を感じて、一緒に行ってくれるのだ。何度、仕方がなかったと言っても聞いてくれなかった。

 フィラと挨拶をしていると、遠くで声がした。チハヤだ。私は手を振り、彼はこちらに駆けてくる。その手には荷物を持って。
 ちーちゃんとは、もう言ってはいけない。第一似合わないし。
 「……本当に済まない事をした。メイプルの親友を、私が……」
 お、チハヤはメイプルって呼んでくれるんだ。
 それに、昔、家に来たときの雰囲気に戻ってる。
 あのときの優しいチハヤだ。
 「反省してるならいいよ。それに、まだ死んだと決まった訳じゃないもの。」
 「そうだな。……修僧士なら、きっと何とかしてくれる。」
 「俺達も一緒に行くしな。」
 いきなり肩に腕が回され、耳元で声がしたので見ると、テティがいつの間にか、私の後に立っていた。
 「いっいきなりそんな事しないでよ、びっくりするじゃない!しかも腕重いし。」
 「悪い悪い、いい高さにあるもんでな。」
 必死でもがく私を、面白そうに抱えて離さない、テティ。
 「ま、お前は俺の子分なんだからな。」
 「子供の頃のことでしょ!」
 私が、そう否定しようとすると、不意に、テティが真面目な顔で呟く。
 「……この十年。俺は、その約束を忘れないで、楽
しみにしてたのに……」
 「えっ……」
 「お前は、どんな理由にせよ、あの約束、忘れちまったんだよなあ……」
 そのまま、私の肩に額をこつんと付ける。
 表情は解らない。
 「や……やだ、ごめん。傷つけたんなら謝るから。……」
 私は焦って肩の上の頭を撫でながらその事をフォローする。それでも、テティは顔を上げる様子もない。
 えぇーっコイツがそんなに傷ついてたなんてぇ!
 「解った、うん。約束守るから、ホント、子分になってあげてもいいから。……だから、機嫌直してよ、ね。」
 私が焦ってテティの方を向いた途端、いきなりテティは顔を上げて、……事もあろうに。
 私の唇に、唇を押し当てた。
 「!」
 「じゃあ、これが契約の証。あ、大丈夫、ちゃんと魔力こもってるから、破ることはないからな。」
 こ……コイツ……
 ああっ私のファーストキスが、こんな所で、目の前に人が居てそんでもって、魔法の材料(しかも不本意)にされてしまうなんてぇ!
 あまりにも恥ずかしくって、怒る気も失せ、かっくりと頭を擡げる私。
 「ん?何だがっかりして。大人のキスの方が良かったか?」
 「いやーっお願いだからもうやめてーっおよめにいけなーいっばかこのへんたーいっひきょうものーっ」
 耳をふさぎながら、私はもう何がなんだか解らなかった。
 もう……勘弁してよ……
 「ま、嫁に行けなくっても、俺が面倒見てやるから。」
 ……誰のせいだと思ってるのよ。
 そんな様子を見てか、フィラとチハヤが笑う。
 ……ホントにお似合いだ。ちょっぴしメイプルとしては寂しいかな。でも、フィラだったら、私の役目が立派に果たせると思う。時には優しく、時には厳しく、彼とやっていけると思う。……うらやましい。ああ、私も、チハヤみたいな繊細な、守ってあげたくなるような彼氏が欲しー。
 「……なーに寂しそうな顔してんだよ。」
 ふん、別にテティにゃ関係ないでしょ。……って、心なしか、テティの腕に、力がこもったような気がす
る……
 何か、自分の心が見透かされたような気がして、私はぱっと身を離す。
 「とっ……ところでさあ、ホントに、いいの、二人につき合わせちゃってさ。」
 そう、三人で修僧士の所へ行くのだ。
 三人の末裔が、もう一人の仲間に会いに行くのだ。
 「今更言うな、もう、決めたんだからな。」
 「今度は、俺達がお前を助ける番だろ?」
 ……二人とも、ありがと。
 声に出すのがなんだか恥ずかしくて、私は心の中でそっと言った。
 「会えるかな、修僧士さんに。」
 「会えなきゃまずいんだろ、ラファエルのためにも。」
 「きっと会えるさ。メイプルが、諦めさえしなければ。」
 二人の言葉が、何とも言えず、うれしかった。
 「うん。」

 「ほら、さっさといくぞ!」
 出発の時間だ。
 テティに手を引かれ、私は駆け出す。
 耳のイヤリングがシャラシャラと乾いた音を立てて、鳴る。
 あの、エルにもらったイヤリングだ。
 「ラファエルが戻ったら、今度は五人で遊びに行きたいな。」
 チハヤが静かに呟く。
 私は笑った。
 うん、そうなったらいいな。私もそう思う。
 テティも、笑った。
 十年前に戻ったみたいだ、って言った。
 なんだか、急に走りたくなって、急いで行きたくなって、私は駆け出した。

 「次の街まで競争!」
 実は、足には自信があるんだ。一番先についてやる!南を、目指して。

 「やれやれ、やっぱり子供だよな。」
 「さあ、私たちも行こうか、お姫さまの元へ。」
 「チハヤ様、メイプルのことは任せてください。もう、チハヤ様はいい人居るんですからね。」
 「さあ。でも彼女は、まだ私の方に脈があると思うけれど。」
 「へ?何ですかそれ?」


 後からチハヤが走ってくる。
 テティがそれを追って何か叫んでくるが、何を言ってるか解らない。
 もちろん、さっき遠くでしていた彼らの会話の内容も解らない。
 人が聞いてないからって悪口言ってんだろうか。

 でも、ま、いいか。
 私は深く考えるのをやめた。
 だって、私の二人の騎士様は、これからはきっと私を守ってくれるから。

 そう、きっと、あの頃のように……

 


三人の師の子供達は頑張って南を目指しました。

神様の国へ、大好きな友達を助けるために

三人は修士様に会えたのでしょうか

それは……

 

DESIRE!-----→END?

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