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昔々、北の国に騎士様がいました。

北の国ではとても強くて、いつも黒い鎧を着けていたので黒騎士様と呼ばれていました。

ある時、黒騎士様が、西の国へ王様の伝令として行かれたたとき、宿を取った街で一人の少女を見つけました。

「そこの君」
黒騎士様は言いました。
「君は、なんて言う名前なのだ?」
少女はびっくりして逃げようとしましたが、あまりに黒騎士様が寂しそうな顔をなさるので小さな声で言いました。
「名乗れる名前なんてございません、騎士様。」

騎士様は言いました。
この街に滞在する間で良いから、私につき合ってくれないか、と。
少女は言いました。
私は、理由はいえませんが、立派な方にお仕えすることは出来ないのです。

ですが、黒騎士様はあきらめません。
「仕えなくて良いから、ただ、話し相手になってくれるだけでいい。」
少女は困ってしまいました。
「私と騎士様が何かしら関わりを持つと、貴方が不幸になってしまいます。」

そう言っても、黒騎士様は聞きません。


「じゃあ、一日だけ」
少女は思いました。

自分のことを語れば、きっと自分から離れていってくれる。
昔、好きだった人が離れていったように。

やがて、黒騎士様が伝令を伝え、この街に戻ってこられると、少女はお母さんとお兄さん、妹に昼間の出来事を話しました。

「やがて、黒騎士様はこちらにやってこられます。私は一日だけ、話し相手になると約束してしまいました。だから、今晩だけ、行って参ります。」

お母さんは言いました。
「石のことは黙っていなさい。もし知れたら、その人を不幸にしてしまいますよ。」

石とは、お母さんの継母を金貨にしてしまった、あの紅い石でした。
お母さんは、あの、優しい娘だったのです。
今は裕福な家の優しい旦那さんをもらって、西の国で暮らしていたのです。

少女は頷きました。
お母さんにあった不幸はよくわかっているわ、と。

少女は、あの黒騎士様がなぜか気になっていたのです。
だから、絶対に不幸にしたくはありませんでした。


やがて、黒騎士様が少女の家に来ました。
少女は黒騎士様の馬に一緒に乗り、宿の方へと行きました。

「君、わざわざすまないことをした。」
黒騎士様はそう言うと、少女を馬から下ろしました。
「いいえ、大丈夫です。」
娘は頬を赤らめて言いました。
黒騎士様に見つめられて緊張してしまったのです。
無理もありません。
プラチナブロンドの髪に整った顔立ち。
黒騎士様は、とても綺麗な方でいらっしゃったのですから。

黒騎士様は言いました。
「なぜ、君は私を避けようとしているのか?その理由を教えて欲しい。」
お母さんから口止めされていたことです。

少女は悲しそうな顔をしました。
黒騎士様はあわてて、少女の涙を拭いました。
「いやなことなら、言わなくて良い。ただ、もう少し、私と居て欲しいのだ。
私は、君に心を奪われてしまった。だから、君と一緒にいたいのだ。」

そんな黒騎士様を見て、少女は言いました。
母の言いつけを破って。
「私は不思議な宝石を持っているのです。この石は願い事を叶えてくれるのと引き替えにその人の命を吸い込みます。
平民の人は恐れてみんな近寄らないのですが、高貴な人たちはこれを目当てに私によってくるのです。
そうして、この宝石が自分の命と引き替えに願いを叶えると知ると、
みんな、私から離れていくのです。」

黒騎士様は、そんな彼女を抱きしめました。
「私は、離れたくはない。その話を聞いても、どこに君が悪いところがあろうか。
君は君だ。石を持っているからと関係ない。
その石は箱にしまって、鍵をかけてしまえばいい。」

少女は、黒騎士様にそう言われ、また、泣き出してしまいました。
今度は悲しい涙ではありません。
うれしい涙です。

そして、彼女はしばらくして、黒騎士様の所へ嫁ぐことになりました。
お母さんもお兄さんも妹も、少女を祝福しました。

幸せな結婚式から数年が経ちました。
二人の間には男の子と女の子が産まれました。
少女は二人のお世話で大忙しです。
黒騎士様もお暇をもらって少女を手伝っていました。

とても、とても幸福な毎日が続いていたある日、その事件は起こりました。

少女が子供部屋へいつものようにお世話をしに行った隙に、黒騎士様のお父様が少女の部屋へやってきました。
お父様は鍵のかかった箱を見つけると、持ち去ってしまいました。
それは、黒騎士様と一緒に封印した、あの、宝石だったのです。
お父様は、西の国で少女の石のことを聞いて、願いを叶えようとしたのです。

黒騎士様が、お父様に用事があって部屋に呼びに行くと、部屋にはだあれもいませんでした。
そして、あの封印したはずの紅い石が転がっていました。


それから数日が経ち、黒騎士様の弟君が、北の国の王女様に見初められて
次の王様になってしまいました。
弟君は、行方不明のお父様が帰ってきたら、大臣になってもらおうと考えていました。

しかし、いつまで待ってもお父様は帰ってきませんでした。

少女と黒騎士様は嘆きました。

 

まさか、お父様があの石のことを知ってしまうとは。
あの石に偉くなりたいといったんでしょうか。

二人は、この石を家の地下に封印して、子供達に理由を言って、代々後継ぎに守らせることにしました。

しかし、少女のお母さんの継母といい、お父様といい、一体どこに行ったのでしょうか。
二人の行方は、あの紅い宝石だけが知っているのでしょうか。

「デザイア」の魔界の想いの物語より抜粋。
著者不明。
 

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