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3.rd 特別な人形~Humane doll~
茜色に染まった糸束。蜂蜜を封じ込めたような色の硝子玉。
 そして、私そっくりの顔を持った頭部。
 「まあ、確かに自分がモデルだったら、少しくらい失敗したって誰にも文句は言われないし、好きなときに、いろんな角度で観察できるわよ。」
 私はため息混じりに、そうぼやいた。
 フィラにこの人形の外見の意見を聞こうとしたら、おおっぴらに作らせて置いて、どうせ変なことには使えないんだから、と、私自身をモデルにしたらと言った。
 ……全く持って、それが一番簡単な方法なんだけど。
 さすがに、自分自身に向かってると、どうも……
 「髪と瞳の色が違えば、別人だと思いますよ。」
 そうは言っても。
 なかなか踏ん切りがつかない私に、フィラがこう言って締めくくった。
 「髪は夕日のような茜色。瞳は明るい蜂蜜色。貴方の色とは正反対で、それで、自分の理想の自分を作ればいいじゃないですか。せっかくチハヤ様が人形の材料費を持ってくれるんですから、腕試しと思って。」
 いやぁ……なかなか言うもんだお姫様も。
 と、言うわけで、私は今、自分と同じ顔の生首もどき(坊主頭)と向かい合っているのであった。
 「はぁ、私の理想の『私』ねえ……」
 しげしげとその顔を眺めた私。
 それが、一番難しいんだよねえ。
 柔らかい頬の感触を確かめながら、まずは瞳の人工神経を繋いでいく。
 ……端から見てると、目から眼球を取り出してるみたいで気持ち悪いけど……しっかり繋げないと、この子の視力がない。
 いくら人形とはいえ、物を考えるのには視力は必要だ。だから『人に近しい人形』と呼ばれて居るんだもの。
 ようやく片目が終わる頃、夕食前の散歩の時間になった。
 「何か、フィラ様が楽しそうだったんだが、それはお前が関係してたのか。」
 部屋から出てきたところでも見たのか、テティがそう、私に言った。
 「うん、人形を見てもらったのよ。」
 見事に咲いた桜の木を二人で眺めながら、自慢げに、私は話した。
 「モデル、誰にしたらいいかなって、聞いたんだ。」
 「ふうん。」
 いまいちワケわからなそうな様子のテティ。
 「わざわざ決めなくったって良いような気がするけど。どうせ、チハヤ様が使うんだから。」
 「でも、決まってたほうがやりやすいのよ。」
 テティの意見に言葉を返すが、花びらを取るのに夢中で、私の方は半分聞いてない。
 「それで、誰をモデルにするんだ?」
 やっと一枚、取れたところで、私は答えた。
 「自分で鏡を見てやるんだ。」
 「は?」
 素っ頓狂な声を上げるテティ。
 「……何よ。」
 「いや、あのな、それって『お前』をそのまま作るって事か?」
 「うん。」
 素直に頷く私に向かって(予想はついたが)彼はため息をついて言った。
 「ペタンコが二人になるのか……。しかも同じ顔の。……面白いか?作ってて。そうじゃなくても……」
 「喰らいやがれぇっ!(語尾を上げて)」
 ごす。
無論、予想がついてて私が見逃すわけは無し。
 まーだ何か言いそうだったけど、続きを聞く気はないので、とりあえずボディ・ブローをかましてみました♪
 「ご心配なく。ちゃーんと、胸は増量しますから。」
 痛がっているテティを後目に、私は庭の中央にある噴水の方へと歩いていく。
 「先に食堂行ってるからね。」
 ふ、口ほどにもないヤツめ。まだ痛がってるのだろうか?
 ……噴水まで走ってきて、さすがに気になって振り返ってみた。
 テティが、居ない。
 あやや。怒ってしまったか。
 その時。
 背後に人の気配がした。
 テティが復讐に来たかっ!
 次の瞬間、
 私は、背中から暖かい腕に抱かれた。
 「うわっ、なに?」
 思わず、声があがってしまう。
 「すまない……もう少し……このままで……」
 その腕の主は、そう言うと、腕に力を込めた。
 なぜか、懐かしい感じが、する。
 薄暗くて、誰かは解らない、が、声は知っている。 不快ではない、暖かくて、いい気持ちだ。
 ……だが。
 チハヤに、なぜこんな事をされているのだろうか、私。
 「チハヤ、さん。やっぱし、私の過去、何か関係してるって事?」
 動けない身体を何とかよじりながら、私は問うが、彼は無言だ。
 ……大体、こーゆーのって、セオリーあんのよね。
 ここでコイツを好きな子(フィラ)が来て……
 思ってるそばから、フィラがやってくる。
 こっちを凝視して……
 ……誤解して、逃げていくのよね……
 本当に駆け出すフィラ。
 あああああぁぁぁぁぁぁ!
 なんてことをぉっ!
 「チハヤさん、ねぇどうしたのよ?」
 私は焦って思わず叫ぶ。
 こんなトコ、今度はテティに、見られたら。
 私のその言葉に、彼は、ぱっと手を離した。
 「……悪かった……忘れてくれ……」
 彼は走って帰っていく。
 がーん。忘れて良いほどのことか、さっきの。あんな事されて忘れろって言うか?フツー。
 私って、何なのよぉ、こいつらにとって……
 テティがやってくる。
 「お前なぁ、不意打ちでああゆう事やめろよな。つき合ってるこっちが……」
 さっきのことは気づかれていない。
 「悪かった。これからはもっと考えてからやるわ。」
 コイツと一緒にいれば誤解されなかったんだもんな。
 「お……おう」
 おとなしい私は珍しいのか、彼は驚いた声を上げた。
 「お前、何かあったのか?顔、赤いぞ」
 えぇ!?
 両手で、頬に手を当ててみる。確かに、熱い。
 「な……何でもない、ほら、走ったからじゃない?」
 私は適当にごまかしを入れる。
 彼は半信半疑ながらも、頷く。
 ……何となく、コイツには、言いたくなかった……
 部屋に帰ると、誰かが、部屋に向かって駆けてくる音がする。……これは……
 「メイカさん!」
 ……やっぱり。
 ばたんと開けられたドアの向こうに、フィラが居た。
 「人形を造りに来た、なんて言って置いて、やっぱりあの方に取り入っているんですね?」
 「いや、そーじゃなくてさ……あっちがいきなり抱きついて……」
 「まあ、チハヤ様の方が、なんて、よくもそんなことをぬけぬけと」
 「あの、その……」
 「大体ねえ、貴方は……」
 くだくだと来る文句の嵐。
 ……まあ、ここがフィラの可愛いところなのだが……くどいよな。
 弁解の余地がないから、苦労してしまう。
 「だから、私は本当に無実で……」
 言いかけたその時、
 「おーい、どうした、メイカ。何か喧嘩してるよーな声がするけど」
 助かった!
 私は、露骨に嬉しそうな顔をしてしまった。
 「……ああ、そう。そういうことですか。だからあんなに否定していたんですね。」
 どき。
 フィラが、さっきとは一転して、優しい声で、そう言う。
 「何だ。早く言ってくれれば良かったのに。メイ加カさんは、テティ様が好……」
 「わわわわわわわわわわっ!」
 慌てて彼女の口をふさぐ、私。だって、本人そこに居るんだよ?それに、私、別にそんなんじゃないしさ。
 「解りました。私、貴方に協力します。」
 ……嬉しそうに笑うなよ。
 「おい、どうしたんだ?」
 廊下にいるテティ。
 「大丈夫、どうもしないから、二人とも、帰ってね……」
 何か、人形以外のことに、気ぃつかいすぎた気がする。
 自分の過去については、ちょっとほっぽっておくか。
 この分だと、人形だいぶ遅れそうだし。
 特別な人形とは、
 『人に近しい人形』
 である。
 基本はただの人形と同じ。
 ……私はその後の仕上げをきれいさっぱり、全部忘れてしまっているのだ。(一章参照)いきなり思い出せってほうが無理なのよねー。
 仕上げとは、『心』を人形に入れること。
 これが出来なきゃ、『特別製の人形』なんて無理。
 あれから躍起になって人形を造っていると、九割方出来上がってしまった。そろそろ仕上げ方を思い出さないとホントにまずい。
 「まだですか?」
 なーんて、チハヤに嫌み言われるし。
 見た目は完璧。心がないだけ。
 挫折。
 はあ……私には無理なのかなぁ……
ため息をはいて、私は、面と向かっているそれをまじまじと見つめ、ゆっくりと記憶を探った。
 目を閉じた、まだ未完成の等身大の人形は、私そのものなのは言うまでもないのだが、心なしか、おばあちゃんの人形、『ガブリエラ』に似ているような気がした。
 『ガブリエラ』は物心つく前から私のそばにいた。
 柔らかい銀髪に優しい海色の瞳。
 不思議なことに、母さんが幼い頃にそばにいた記憶はなくて(多分、母さんは忙しかったのか、それとも私が頭を打ったときに一緒に飛んでしまったか)、私はガブリエラに育てられた。
 私も銀髪だったから、
 「メイも、ガブリエラみたいに綺麗になれる?」
 とよく聞いていたことを覚えている。
 決まってその後に彼女は微笑んで、何かを言うんだけれど、それも忘れてしまった。むう、忘れ物魔王め。
 ガブリエラが人形だと知ったのは、今から七年前。九歳の時だった。その頃には、おばあちゃんはもう寝たっきりで立ち上がれなかった。
 病床で、彼女は不意に、お見舞いに来ていた私にこう言った。
 「メイ、貴方には教えるわ。ガブリエラはね、『人形』なの。だけど、人でもあるのよ。」
 私は、最初その意味が分からなかった。
 でも、おばあちゃんはその事が解っていたかのように、幼い私にも解るように教えてくれた。
 「私の作った、心のある、命のある人形なの。」
 おばあちゃんは、わたしのあたまを撫でながら、その人形の作り方を語り始めた。
 「まず、私のおじいさまが作った方法で、人の心を持つ人形を作るの。ガブリエラはそれだけではなくて、『聖なる心』という宝石の力で……」
 おばあちゃんは、細かく、『彼女の作り方』を教えた。特別製の人形のことだ。確か、これは、一生に一度しか作れない、とか言ってたなぁ。
 「貴方が、本当に作りたくなったときに、挑戦してごらんなさい。」
 そこで色々教わって、そして一週間が過ぎた。
 技術を口頭で私に託したおばあちゃんは、役目を終えたかのように、息を引き取った。
 年齢からすれば大往生だし、死に顔も安らかだし。
 幸せだったと思うよ。うん。
 でも……
 大好きなおばあちゃんが居なくなるのは悲しかったし、それに……
 「メイ、お別れね。」
 おばあちゃんが亡くなる二日前に、ガブリエラがぼそりと呟いた。
 「ユキノから聞いたかしら。私は、彼女と命を共有してるの。」
 「おばあちゃん、死んじゃうの?」
 私は不安げに彼女を見上げた。
 彼女の海色の瞳が、涙のせいか、曇って見えた。
 私は、彼女に抱きついた。
 暖かい、身体。
 私は、涙がこぼれてきてしまった。
 しばらく、私たちは話すことが出来なくて、黙ってしまった。
 「メイ、ユキノから、このペンダントを預かってきたの。『聖なる心』。貴方の家に伝わる宝石。これで、『人に近しい人形』を作ることが出来るわ。」
 しばらくした後、思い唇を開いて、彼女は語った。 私は、それを受け取った。
 サファイアのようだった。
 高い、天まで続く空の色。
 その煌めきが、まるで慰めてくれているようで、私は嬉しくなった。
 ガブリエラは、それを見届けると、優しい笑みを私に投げかけてくれた。
 そして、彼女は立ち上がった。
 「楽しかったわ、メイカに逢えて。」
 「ガブリエラは、どうなっちゃうの?」
 私は、その後を追うように立ち上がった。
 悲しい目。
 彼女は、瞬きを一つして、さあね、と言った。
 「その宝石は、使った人の望みを叶えるけれど、効き目の切れる期限は、その人が死ぬまで。だから、私も……ね。」
 私は、後を追って行きたかった。
 でも、それを彼女は許さない。
 ガブリエラは、外に歩いて行く。
 だんだん小さくなる。
 「ガブリエラ!」
 私は叫んだ、力一杯。
 「さようなら、私のメイカ」 
 最後に、彼女は振り返って、明るい日溜まりのような微笑みで、そう言った。
 ガブリエラは、その日から姿を消した。
 多分、おばあちゃんと一緒に……
……思い出した。
 ひいひいおじいちゃんの、心を入れるための魔法!……
 「私でも、そんな魔法、使える?」
 おばあちゃんに、そう聞いたことがある。
 「もちろんよ。貴方には素質があるもの。」
 そうして、おばあちゃんは、呪文を語りだしたのよ。
  成功するか、見守っていてよね、ガブリエラ。 
 仮初めなれども 美しき物よ
 存在あれども 儚き物よ
 我が命ずる 汝に命ずる
 その内たる思いを 言葉と紡ぎ
 普く告げよ
 人形に心を入れる呪文。
 おじいちゃんが、悪戦苦闘の末に見つけた魔法。
 
 かっと、身体が熱くなっていく。
 胸から、手足、髪の一本一本まで、その熱い血は流れ込んでいく。
 確か、おばあちゃんの話だと、この術は自分の生命力を削って発動するらしい。……だから、一度に何回もと言うわけには行かないらしい。
 とんでもない術だ。
 ま、今回はこの子だけだから許容範囲だろう。
 朧なれども 有る物よ
 我に告げよ その言葉
 古の血は祖の約束
 我は祖の後継者ぞ
 汝よ自ずからその瞼を開き
 新しき命を持ちて
 目覚めよ
 辺り一面に青白い光が走る。最初はその光は無秩序に部屋を飛び回っていたが、そのうち、人形を見つけたかのように、彼女に集中して、降り注がれた。
 ずいぶんと長い間、私の中から出てきた光は、彼女に注がれた。
 ……そして
 光が止むと、目を閉じていた人形はその瞼を震わせて、ゆっくりと目を開いた。
 蜂蜜色の水晶二つが、二、三度瞬きをして、その焦点を合わせるまでに、大した時間はかからなかった。
 「おはよう。調子はどう?」
 私は、その瞳に自分が写っているのを確認し、手を振る。
 「貴方は……?」
 彼女は首を傾げた。
 いかにも、純粋そうな、仕草だった。
 「私は、メイカよ。」
 ……やった、成功だわ。普通の人形なら、こんな風に受け答えしないもん。相手が誰だろうと微笑むんだもん!
 改めて、見つめてみる。
 我ながら上出来だわ。
 茜色の髪は真っ直ぐで長く(ポイント)、さらさらと、窓から入ってくる風に揺れている。ふとしたときに、彼女が髪を掻き上げる仕草が、いい味(?)出してる。蜂蜜色の瞳を縁取る睫は長くて(これは、私に忠実よ、ホントに)、白い頬には、わずかに赤みが差している。肢体は長くて、スタイルが良い。まさに理想の私だわ。
 私の普段来ているラフな格好は、彼女に似合わないような気がしたので、なるべく彼女に似合いそうなやつを、持ってきた中から選んでみました。黒いリボンで縁取られた、シンプルなワンピース。
 もう万歳したいくらいによく似合ってる!
 こんこん
 ドアを叩く音、あり。
 フィラか、チハヤだろう。
 ああ、なるべくならチハヤ、来ないでね。
 もうちょっと、この子を見ていたいからぁ……
 「入りますよ、メイカ」
 やたっ、フィラだ。
 「どーぞ、入って入って」
 フィラが部屋にはいると、もう一人の私が、彼女を出迎えてくれた。
 「お早う御座います。」
 「…………出来たの?人形」
 「うん」
 嬉しそうに私が頷くと、フィラもゆっくりと彼女を見つめる。
 「……良い出来だと思いますよ。少なくとも、私が王宮で見た人形達よりは、ずっと自然です。」
 「ありがと。」
 
 「あの……」
 いきなり、『彼女』は喋りだした。
 「私の、名前って何ですか?……」
 「あ……」
 忘れてた、この子に名前、付けてなかったや。
 「良い名前有る?フィラ」
 「そんな、急に言われても。」
 確かに、急に言われたって思いつきもしない。
 ここは先人に乗っ取って、関連付いた名前を付けるしか。私たちは、こそこそと話し合い始めた。
 「……前の人形は、ガブリエラ。」
 「『ガブリエラ』……天使の名前ね。」
 「その前のは、ウリエル」
 「……天使続き、か。」
 「最初のが、ミカエラ。」
 「……天使……」
 「となると、次は……」
 「ラファエル、が妥当な線じゃないですか?」
 ラファエル、かぁ。
 うん、良い名前かも。
 私は、フィラと頷き合った。
 「貴方の名前は、ラファエルで良いかなあ?」
 今決めた名前を、彼女に良いかと尋ねると、彼女はさも、嬉しそうな顔をした。
 「ラファエル、ですね。」
 「うん。」
 ……あれ、ちょっと待てよ。
 今、ふと考えたんだけど。
 この子は、私のじゃないんだったぁっどうすんだ、名前なんて勝手に付けちゃってぇ!
 「どうなされました、私の主人。」
 ああ、やばい。この子も誤解してる。
 「本当に、どうしたんです?メイカ」
 もう、涙目の私。
 「……フィラ、この子、チハヤの、でしょ?……名前、勝手に決めちゃったよ?」
 「あ。」
 「……と、言うわけで、貴方はチハヤって人の、人形になるわけ。」
 「はあ。」
 一通りの説明が終わった後に、ラファエルは間の抜けた声を上げた。
 「だから、私は主人じゃないのよ。」
 「そうですねぇ。」
 …………。
 「あのさ、ラファエル(仮)。貴方、感情が(多分)有るんだからさ、もう少し、リアクションしてくれない?」
 あんまりにも落ち着いてるから、私は思ってることを口にしてしまった。
 私が失敗しちゃったって可能性もあるのに……いや、むしろそっちの方が確率高いなぁ。そうだとしたら、「あら、まあ」都下「リアクション、と言われましても……」とかだなぁ。なんか、我ながら予想が付くのが悲しい。
 「何ですか?その(仮)とか(多分)というの?」
 きょとんとした目でそう言うラファエル。
 ……やっぱし、こんなモンよね。
 作り直しか……
 なんて思ったその時、彼女が放った言葉は、意外な物であった。
 「思ったのですが、それでは、チハヤ様が欲しいとおっしゃったのは、私ではなく、その宝石を使って、人間にしろと言うことではないですか?」
 
 『聖なる心』
 これを使うと、命を共有して、人に出来る。
 確かに、そうしないと特別製とは言えない。
 誤魔化しちゃおうかなー……とか思ってたんだけど、だめ?
 ……だめよね……解ったわよ。
 私は、形見のペンダントをラファエルに預け、彼女
に「願い」を施した。
 これは、人形側にも、「人間になりたい」って願いが必要らしい。
 フィラが見守る中、ラファエルは、ペンダントを握りしめて祈った。
 私も、祈った。
 すると、辺りが真夏の日のように明るくなり、一筋の光でエルを照らし出した。
 見る見るうちに、彼女の手足は柔らかそうな、そして血の気のある本物の足になった。
 彼女の髪は、さらさらとなびいた。
 彼女の瞳は、生き生きと輝いた。
 彼女の体は、人間になった。
 ……はあ、つかれた。
 なんだか知らないけど、体が重くなった。
 多分、術をたて続けに使ったからだと思う……。生命力不足か……
 「メイカ?どうしたの?」
 「ごめん、……今日はお休みして良いカナ……眠い。」
 瞼が、とても重くなってくる。
 やっとの事で、ベッドにたどり着いたとき、あたしの意識は、無かった。
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