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昔々、神の申し子と呼ばれる人形師が居ました。
彼はとても器用なので、いろいろなからくりを作ったのです。
人のように動くぬいぐるみ
人のように喋る小鳥の置物
人のように微笑む人形……
ですが彼は、それだけでは満足しませんでした。
人のような『心』を持つ人形を作りたい。
彼はそれだけを胸に、部屋に閉じこもってしまいました。
そうして、五年が過ぎ去りました。
彼は、『女の人』を連れて、部屋から出てきました。
彼女は彼の望んでいた『心』を持っていました。
彼に微笑み、思ったことを喋るのです。
もう、彼女は「人形」ではなく「人間」でした。
ただ、体の中身と、命を除けば。
二人は、幸せな毎日を送りました。
そのうちに、二人はお互いを愛し始めてしまいました。
しかし、彼女は人形です。
結ばれることは出来ません。
そんなお互いに諦めかけていたある日のこと。
二人の家に、一人の修士様が一夜の宿を求めて訪ねていらっしゃいました。
修士様は薄い布地のローブだけを羽織っていらっしゃったので、とても寒そうでした。
二人は、そんな修士様を快く迎えてあげました。
彼女は、体が冷えていらっしゃるだろうと、温かいスープでおもてなししました。
そして彼は、これから先寒いだろうと、クローゼットから厚手のコートを取り出して、修士様へ差し上げました。
修士様は大喜びでこうおっしゃいました。
「もし、あなた方が望むことがあるのなら、一つだけ叶えてあげましょう。
全てが叶うわけではないですが、温かいスープと心遣いのお礼に出来うる限りのお手伝いを致しましょう。」
二人は顔を見合わせました。
望み。
彼は思いました。
『彼女が、本当の人間になってくれたら。このままだと、お互いに心の内を打ち明けられない。
でも私と同じ、人間なら。気後れせずに、彼女に心を伝えられる。』
彼女も思いました。
『私が、本当の人間になれたなら。人形の私が、彼を好きなんて、身分違いだと解っている。
でも彼と同じ、人間なら。安心して、彼に思いを打ち明けられる。』
でも、こんな事、神様でもない限り不可能だ。
二人はため息をつきました。
だからといって諦めたらなにもならないと、彼は、修士様に相談してみました。
彼女を人間にしたいんです、と。
修士様は笑っておっしゃいました。
「本当に彼女と共に生きたいならば、この宝石が役に立ちましょう。」
修士様が差し出されたその赤い石は、不思議な光を放っていました。
二人がその石を受け取ると、いつの間にか、修士様が消えていらっしゃいました。
二人は、修士様のおっしゃったことを信じて、朝焼けの中、石に祈りました。
「人間になれますように。」
するとどうでしょう。
光が雨のように、彼女に降り注いできました。辺りは、まるで真昼のように明るくなりました。
そして、彼女の白い頬に、赤みが差しました。
重そうな腕が、華奢な少女の手になりました。
見る見るうちに、彼女は人間になっていきました。
二人は喜び、そして、修士様に感謝しました。
それから、二人はどうしたのでしょうか。
二人は、いつまでも幸せに暮らしました。
幸せな夫婦として。
この二人を幸せにしてくれた修士様は誰だったのでしょう?
もしかしたら、神様だったのかも知れませんね。
「デザイア」の聖なる心の章から抜粋。
著者不明。
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