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1.st 私のお仕事v~Request to Meika ~
いつも通りの時間に、私は起きた……つもりだったけど、まだ、辺りは薄暗い。私は目覚まし無しで、いつも同じ時間に起きているのに。何があったんだろう。
……あれ?
私は奇妙なことに気がついた。
「ここは、私の部屋じゃない?」
落ち着いて周りを見回してみると、ここは南向きの大きな窓を持った、貴族も仰天の豪華な一室。
あ、いや、私が別に貴族に偏見を持ってるわけじゃあないんだけどさあ。大店のお嬢さんなら、これくらいの部屋だろう、って感じかな。綺麗なの、とにかく。
高い天井、大きなベッド(天井があるやつね)、細かい細工の施されたテーブルセットに、綺麗な彫り物のドレッサー。それとね、私が一番感動したのが、最初にふれた大きな窓!
そこから見えるのは、広い庭と、高い山。
山のせいで、どうやらいつもの日差しが入ってこないようだ。
はあ、私の部屋とは偉い違いだ。
私の部屋は、至って平民的でさあ……
……あ、
そんな、説明してる暇はない!
何で、こんなお姫様っぽい部屋にいるのかがそもそもの疑問点よ!感動したりする暇もナ~シ!!
……うーん……何でだろう?
私がしばらく考えた後に、手を打って出した結論。
「夢だ。」
だって、そんなのしか考えられないんだもん。
私、こんなゴウセイな部屋にいる理由ないし。
うん、これが一番可能性高いよ。
なんて、一人で納得していると、
「夢じゃありませんよ、メイカ・エイプリルさん。」
ドアの向こうから、涼やかな男の人の声がした。
私の名を呼んで。
かちゃり。
ドアの開く音がして、その男の人が入ってきた。
歳は十七、八と言ったところで、さらっさらのプラチナブロンドに石榴石の瞳。切れ長な目を縁取るまつげは長くて、美人、と言う形容詞がもっとも当てはまるだろう。
私ぐらいの女の子だったらほとんどの子が、「きゃ~かっこい~」なーんて叫んでメロメロだと思う。
私的には、目つきの鋭い兄ちゃんなんだけどね。
「私はチハヤ・ゲイブル、北の黒騎士六代目です。貴方と同じ宝石を受け継いだ者です。」
「で?その黒騎士さんが、私に何か用があってここに連れてきたとでも?」
話が見えてこない。何で、私はこんな所にいるのかと、そんな意味でさらっと言ってみた(まあ、多少棘のある言い方だったけどさぁ)。
チハヤ(さん↑やっぱし一応つけとかないとね)は、心外そうな顔をして一瞬とまどった。でも、それはホントに一瞬のことで、すぐに元の顔に戻ってしまったが。
まあ、深く今のを追求したって何になるわけじゃなし。私は気づかない振りをして続けた。
「北の黒騎士って言えば、ガネットの名門、それも王室関係の間柄って言うけど、ここって貴方の屋敷なの?」
「そうです。」
「貴方が六代目とすると、貴方のお父様かお母様は?」
不躾な質問、と思うかも知れない。だけど、十七、八で家を継いでいるって事は、
「居ません。この屋敷の住人は、使用人達と私だけです。」
そう言うことなのだ。
まだ幼い(私的には一人前は二十五過ぎから。それ以下はまだ子供。仕事でさんざんオジサマ達を見てるからさあ。)のに、こんな所で領主をやってる黒騎士様。私の住んでる町、東の国モブ・アーレンの商業地区、キワルでも、その話は有名だ。
「私の所でも有名よ。黒騎士様の人形師探しは。」
「そうですか」
『人形師』
からくり人形を作る職業のこと。
この大陸、サウザント・リーブスでは、その存在は貴重とされている。特に、『東の人形師』と呼ばれる一族は。
この一族は、人形師の中でも最高の腕を持っている、と言われてる。もちろんその通り。人に近い、言わなきゃバレない人形を作るからだ。この一族の作る人形には、魔力が宿っているらしい。お母さんから聞いた話だけど。
私はこの人形師の孫。しかも後継者に当たる。
おばあちゃんの長男ソナタ伯父さんは、仕事のために乗った飛行機が行方不明。発見されたときは焼け跡には翼しか残ってなくって、生死不明。アリア伯母さんは流行病でなくなった。二人とも、まだ二十代前半だったのに。末っ子のカノン母さんは人形師の証である『空の瞳』を持たなかった上、人形師よりも花屋さんになることを希望したのだ。
だから、たった一人の孫の私が後継者なのだ。おばあちゃんの作る人形に憧れて、人形師になりたいと思っていた私にとってはすごいこと。後継者なんて光栄だ。
今は、だんだん南の国から伝わっている工業が活発になって、人形師の仕事のほとんどが機械師によって行われてしまっているので、それが、更に人形師の縮小化となっているんだけども。
そう、やっと思い出してきた。
「私は、貴方に呼ばれてここに来たんだっけね。」
「そうです。」
さっきの心外そうな顔はコレだったかあ。寝ぼけてて、昨日のことが頭から出てこなかったんだ。
「御免なさいねぇ、私、七歳の時の記憶が飛んでて、それ以来物忘れが激しくなっちゃってねえ。」
あはははは、と笑ってごまかす私。
疲れた顔のチハヤさん。
……………………
ご……ごめんなさい……。
改めて自己紹介。いきなり本題入っちゃったし。
私の名前はメイカ。
メイカ・エイプリルって言うの。十六歳。
生まれは東の国モブ・アーレン首都、シータ。育ちは商業都市キワル。だから、生粋のモブ・アーレン子。
さっきも言ったとおり、『東の人形師』六代目……見習い。十七の誕生日の時に正式に襲名するんだけど、もうほとんど一人前にこなしているつもり。後、三週間で誕生日だもんね。
ああ、さっきの七歳の時の記憶がないってのは本当。
普通はそれくらいの記憶はおぼろげでも覚えてるハズなんだけど、私の中には、全くないのだ。
過去がないなんて、怖くないと言えば嘘になるけどさ。もう、気にしないことにしてる。だって、なんだかイライラするし。
理由は、木に登ってた私が足を滑らせて転落。頭を打ってしまったせいらしい。ホントかどうかは定かじゃないけど。
うん、こんなもんかな。
自己紹介もここまでにして、そろそろ本文に戻ろう。
「そ、それでぇ……ご用件は、何でしょうか……」
沈黙を破るために喋る私だけれど、やっぱりたどたどしくなってしまう。だって……いくら私が原因とは言え、この重苦しい空気……。
気を取り直すかのように、彼は静かにこう言った。
「貴方の家に伝わる人形を作っていただきたいのです。」
……人形……
文字通り、人形師の仕事は人形を作ることだ。つまり私のお仕事cってわけだ。
人形には二つ種類があって、一つは自動人形。鉄や電脳を使って作る、いわゆる機械人形。もう一つは、からくり人形。魔力を込めて、木や石、ゴムなどから作る、至って原始的な人形。もちろん、性能差は言うまでもなく。からくり人形を作るのに一ヶ月近くはかかるけれど、自動人形ならその期間で四体は作れる。量産できるのだ。
それでも、人形師が細々と存在しているのは、からくり人形には独特の『暖かさ』と、依頼人の希望を忠実に描き、世界でたった一体の人形という貴重さを持っているからだと思う。私も、そんな暖かさに惹かれて、お祖母ちゃんのような人形師になりたいって思ったんだけどね。
その、『人形』を作る。
「それで、どの人形が良いんでしょう。歌うオルゴール人形?喋る小鳥の置物?……それくらいしか覚えてないかも知れないけれど。」
私はそっと言ってみた。
しかし、チハヤさんはあくまでキッパリと言い放った。
「貴方の家に伝わっている、『特別な人形』です。」
……………………。
「覚えてないってば。」
思わず真顔で言ってしまった。
無論、彼が盛大にズッこけたのは言うまでもない。
いや、だからさあ、今まで私が作ってたのは、前に言ったようなのだけであって、人型なんて、頼みに来る人いなかったんだもん。いや、ひとりでに動くマリオネットぐらいなら作ったけどさ、『特別な人形』なんて作れるどころか、覚えているかどうか。何分、小さい頃に口で教わったぐらいだし、全然作ったこともないし……。
こんなので「わたしぃ、人形師なんですぅ」なぁんていったら、どつかれること請け合いだね。自分でも笑っちゃうわね!はーははははのはっはっはっ!!
…………っつーか、意味不明だね、こりゃ………………む、むなしい…………。
「お、覚えていないって事はないでしょう。」
必死に体勢を立て直して私を睨むチハヤさん。
あら、こめかみに血管浮き出てるぅー。以外と短気サン♪……なーんて、遊んでる場合じゃないか、コレ。
「だから、忘れっぽくなっちゃったって言ったぢゃない。」
てへ♪と可愛く微笑む私。
もちろん、そんな色気(?)が通じる相手じゃなかった。
彼は頭を抱えつつ、すっと右手を挙げて、何かの合図をした。
と、同時に。
きちっとした服を着込んだ、どうやらこの家の兵士のような人たちが、どかどかとドアからやってきた。
「回りくどいことはやめにしましょう。貴方には選択権があります。人形を作るか、それとも……」
何かが吹っ切れたような顔。最初の微笑みとはうって変わった皮肉そうな笑み。
「もちろん、作っていただけますね。仕事に必要な材料はこちらで全て、注文どおりに用意しますし、代金も、相場の五倍は出しましょう。……決して、悪い話ではない、と思いますが。」
有無を言わさず、やれ、ってことだよな、これは。
彼の後に立っている人々の手には、濡れたように輝くブレードやナイフが、また、人によっては銃を構えていたり、端っこの方になると、なんと、ミョーな呪文を唱えてるような人がいる。
……コレって、もしかしなくても、命の危機なんじゃないかしらん……もし断ったら……想像できないほど、恐ろしい……!
「そうですね、人形のこと、思い出せなかったんですよね。でしたら、ここにいる魔導師に、色々やってもらう、と言うこともできますが……やってみましょうか?」
紅い瞳が冷たく輝く。
その涼しげな声が冷たく響く。
こ、怖いです……マジで……
ここまでされて、断れるほど、私は強くはない。
つまり、引きつった顔で、私はこう答えるしかなかったのだ。
「無理にでも思い出します!します!やりますぅ!!是が非にも、やらせてくださいませ……!」
昔々、神の申し子と呼ばれる人形師が居ました。
彼はとても器用なので、いろいろなからくりを作ったのです。
人のように動くぬいぐるみ
人のように喋る小鳥の置物
人のように微笑む人形……
ですが彼は、それだけでは満足しませんでした。
人のような『心』を持つ人形を作りたい。
彼はそれだけを胸に、部屋に閉じこもってしまいました。
そうして、五年が過ぎ去りました。
彼は、『女の人』を連れて、部屋から出てきました。
彼女は彼の望んでいた『心』を持っていました。
彼に微笑み、思ったことを喋るのです。
もう、彼女は「人形」ではなく「人間」でした。
ただ、体の中身と、命を除けば。
二人は、幸せな毎日を送りました。
そのうちに、二人はお互いを愛し始めてしまいました。
しかし、彼女は人形です。
結ばれることは出来ません。
そんなお互いに諦めかけていたある日のこと。
二人の家に、一人の修士様が一夜の宿を求めて訪ねていらっしゃいました。
修士様は薄い布地のローブだけを羽織っていらっしゃったので、とても寒そうでした。
二人は、そんな修士様を快く迎えてあげました。
彼女は、体が冷えていらっしゃるだろうと、温かいスープでおもてなししました。
そして彼は、これから先寒いだろうと、クローゼットから厚手のコートを取り出して、修士様へ差し上げました。
修士様は大喜びでこうおっしゃいました。
「もし、あなた方が望むことがあるのなら、一つだけ叶えてあげましょう。
全てが叶うわけではないですが、温かいスープと心遣いのお礼に出来うる限りのお手伝いを致しましょう。」
二人は顔を見合わせました。
望み。
彼は思いました。
『彼女が、本当の人間になってくれたら。このままだと、お互いに心の内を打ち明けられない。
でも私と同じ、人間なら。気後れせずに、彼女に心を伝えられる。』
彼女も思いました。
『私が、本当の人間になれたなら。人形の私が、彼を好きなんて、身分違いだと解っている。
でも彼と同じ、人間なら。安心して、彼に思いを打ち明けられる。』
でも、こんな事、神様でもない限り不可能だ。
二人はため息をつきました。
だからといって諦めたらなにもならないと、彼は、修士様に相談してみました。
彼女を人間にしたいんです、と。
修士様は笑っておっしゃいました。
「本当に彼女と共に生きたいならば、この宝石が役に立ちましょう。」
修士様が差し出されたその赤い石は、不思議な光を放っていました。
二人がその石を受け取ると、いつの間にか、修士様が消えていらっしゃいました。
二人は、修士様のおっしゃったことを信じて、朝焼けの中、石に祈りました。
「人間になれますように。」
するとどうでしょう。
光が雨のように、彼女に降り注いできました。辺りは、まるで真昼のように明るくなりました。
そして、彼女の白い頬に、赤みが差しました。
重そうな腕が、華奢な少女の手になりました。
見る見るうちに、彼女は人間になっていきました。
二人は喜び、そして、修士様に感謝しました。
それから、二人はどうしたのでしょうか。
二人は、いつまでも幸せに暮らしました。
幸せな夫婦として。
この二人を幸せにしてくれた修士様は誰だったのでしょう?
もしかしたら、神様だったのかも知れませんね。
「デザイア」の聖なる心の章から抜粋。
著者不明。
1998-09~ 文芸部 部誌に寄稿。不定期連載みたいなカンジで3回。
最終的には3年の文化祭で個人誌というカタチで加筆して発行しました。
以下は加筆バージョンの方です。
個人的に気に入ってるので、リライトしてUPしようかと思ったんですが、
どうにも当時の勢いやスピード感がだせないので、とりあえずそのまま。
リハビリがてらちまちまリライトはしてみますわ~。
私は弱い人間です。
すぐに壊れる心を持っています。
……けれど今、私は自分が好きです。
貴方が私を変えてくれたから、
貴方が私に優しい言葉を
癒しの雨のように注いでくれたから、
今は、私らしく生きていけます。
ホラ、こうしている今も
私は幸せなんです。
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